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雇用契約書の作成における注意点

雇用契約書の取り交わしは実施されているでしょうか。雇用契約書は使用者と労働者との間で、労働条件についての合意文書として重要な役割を担います。そのため会社と労働者との間に認識のズレが生じないよう、給与額や雇用条件の変更時期には、社員一人一人と取り交わします。

①労働契約とは
 使用者と労働者との間で「労務の提供」と「労働の対価としての賃金の支払い」についての合意がなされることを労働契約と言います。労働基準法では、「労働契約の締結の際には、賃金および労働時間等の一定の事項については、書面により明示しなければならない」と規定されています。また、「明示された労働条件と事実が相違する場合は、労働者は労働契約を即時に解除することが出来る」と法律で定められていますので、実態とかい離がないよう十分注意が必要です。労働者との齟齬が生じないように専門家の意見を聞くことをお勧め致します。

②労働条件通知書と雇用契約書の違い
 労働条件通知書とは、使用者が労働者へ労働条件を明示するために使用する書面を言います。一方、雇用契約書とは、使用者と労働者の間に成立した雇用契約の内容を記したものであり、さらに両者の署名又は記名押印を必要としますので、合意がなされたことを証明する書面としての効力をもちます。
 また、2019年4月施行の法改正より、書面以外の通知方法(労働者が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メール等の送信による労働条件の明示方法)も可能となりました。
 労働条件通知書のみで運用されている会社も多いですが、労働者との合意を証明する文書として保管するために、雇用契約書の運用をお勧め致します。

③雇用契約書の記載内容
 雇用契約書の記載内容には大きく二種類あります。具体的には次の通りです。
(1)書面で明示しなければならない項目(絶対的
  記載事項)
 ⇒雇用契約書に必ず記載して下さい。
  ・雇用契約の期間、雇用期間更新の有無
  ・就業場所、仕事の内容
  ・始業終業時刻、休憩時間、休日、休暇
  ・所定労働時間を超える労働の有無
  ・賃金の決定、計算、支払いの方法
  ・退職に関する事項(解雇の事由を含む)
 *パートタイマーであれば以下の項目も同様に、
  書面での明示義務があります。
  ・昇給の有無
  ・退職手当の支給の有無
  ・賞与の支給の有無
  ・労働条件に関する相談窓口

(2)制度があれば、書面又は口頭で明示しなければならない項目(相対的記載事項)
 ⇒雇用契約書に記載することをお勧めします。
  ・昇給の有無
  ・退職手当の定め(労働者の範囲、決定方法、計算方法、支払の時期)
  ・臨時に支払われる賃金(賞与など)
  ・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  ・社員負担の食費、作業用品費
  ・安全衛生、職業訓練、表彰、制裁、休職

④雇用契約書の取り交わしの実務ポイント
(1)雇用契約書は給与額や雇用条件の変更時期には取り交わしましょう。また、賃金以外の労働条件が例年と同じ内容であっても、雇用契約書を繰り返し、読み返しますので、「知らなかった、見落としていた」といった説明不足を減らすことができるので取り交わしを推奨します。
(2)会社控、本人控の2通を用意しましょう。
 1通のみ作成しても、契約書としては成立しますが、トラブルが起きたとき、すぐに双方で雇用契約書が確認できるように2通作成します。
 また、その場でサインしてもらうのではなく、一旦持ち帰って次の日に提出してもらうようにします。「その場でサインを強要された」等と言われないように雇用契約書の内容を十分に確認する時間を与えるためです。翌日回収できない場合であっても、「5日以内」等の期限を明確に設けましょう。
(3)該当の給与計算期間前に取り交わしましょう。
 賃金の内容に変更がある場合は、必ず、その給与計算期間が始まる前に取り交わしを行います。

⑤令和6年4月より労働条件明示の制度改正!
(1)全ての労働契約の締結時と有期労働契約の
 更新時に、就業場所・業務の変更の範囲を明示
(2)有期労働契約の締結時と更新時に、更新上限
(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と
 内容を明示
(3)無期転換申込権が発生する更新のタイミング
 ごとに、無期転換申込機会と無期転換後の労働
 条件の明示

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