金融機関は3月決算がほとんどですので、決算・仮決算が終わったタイミングの4月・10月は人事異動の季節です。通常、1支店の在籍期間は3年~5年で、他業種と比べても早いサイクルだと思います。普通に考えれば同じ支店で長く働く方が地域やお客様の事に詳しくなれますし、親密な関係も築くことで業績も上がるのではと考えるのが自然です。また「地元密着」を理念に掲げる金融機関が多い中、人がコロコロ変わるのは矛盾していると思うのは当然だと思います。しかし、そこには「担当者の不正を防ぐこと」と「担当者とお客様の癒着を防ぐこと」という2つの理由があります。
1, 担当者の不正を防ぐ
なぜ人事異動が多いかというと、まず不正を起こさせない環境を作ることが挙げられます。特定の者に特定の仕事を長く任せることで、不祥事に繋がった事例が過去多くみられますし、発覚が遅れることで被害額も大きくなり、お客様に多大な被害を及ぼすことにもなります。
2, 担当者とお客様の癒着を防ぐ
担当が長くなり、仲良くなり過ぎたばかりに情が移り、融資が無理な先に対し、嘘の情報や試算表の数字を誤魔化し、あたかも業況が良いように見せかけて融資を行う「情実融資」や「浮貸し」等に手を染めさせない為です。このような行為は背任行為とみなされ刑罰の対象になります。公共性の高い金融機関の不祥事は、社会に与える影響も大きく、透明性の高い経営が求められることから、異動が頻繁に行われるわけです。
◆ 引継ぎ期間はとても短い!
引継ぎ期間ですが、基本的に3、4日間が一般的です。地域担当している人は法人個人合わせれば500件以上の担当先がある場合もあります。その中で3、4日間をどう使うかというととにかくお客様に異動の事実を知ってもらうことに尽きます。朝から夕方までひたすら訪問し、不在であれば、電話や担当者と新任者の名刺を入れるだけの場合もあります。日に数十件も訪問してあいさつをするので、そして帰店してからは、引継書の作成です。現在進行中である案件の引継ぎやキャンペーンなどの協力先、以前にトラブルがあった先、気難しく注意を要する先、訪問可能時間、先々の預金融資情報等、頭にあることを全て書面にしていきます。常日頃から引継ぎ事項のデータを更新しておけば、それほど手間ではないですが、行っていないと大変な作業になります。その書面と挨拶に回った記憶だけが、引継がれていく事になります。お客様の立場からすれば、自分のことはきちんと前任者から聞いているものと思われると思いますが、実際はこんなもので、丁寧には引き継がれておりません。
また、引き継ぎのスケジュールが非常にタイトなのは、多くの時間をかけては仕事が回らなくなるということと同時に担当者が不正を働いていた場合、証拠隠滅する時間を与えない為ということもあります。
◆ 担当者変更は自社のアピールのチャンスです!
企業側からすると、金融機関の担当者が変わると、「やっと慣れてきたのに…」や、「やっとうちのことを理解してくれてきたのに…」と思われる方が多いと思います。また、金融機関の担当者も、「今更こんなこと聞いたら、社長怒るだろうな…」と思っているものです。担当者のそのような遠慮のせいで、自社の強みが金融機関に正しく伝わらないのはもったいないことです。ですから、金融機関の引継ぎ事情に理解を示し、新担当者に対して一から丁寧に自社の説明をしてあげることが、新担当者との関係性を良くするための秘訣ではないかと思います。担当者変更のタイミングで工場見学などをしてもらうのも良いかもしれません。
自社の魅力や強みを新担当者の方に理解していただくことで、今後の円滑な取引につながりますので、しっかりアピールをしましょう!
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